独立行政法人
国立文化財機構
奈良文化財研究所埋蔵文化財センター
環境考古学研究室・客員研究員


丸山 真史 
「「江戸時代の京都町民の食と健康に関する骨考古学的研究の試み-遺跡出土の人骨・動物骨の分析による食と健康の歴史解明を目指して-」」

◇助成研究評議委員

埋蔵文化財センターで、環境考古学の研究者という「食と健康」との関係は一見想像出来ない方ですが、遺跡出土の人骨・動物骨の分析から「食と健康」の成果で、まずその発想が私には極めてユニークに感じられ目を引きました。対象を江戸時代の京都のゴミ穴から出土した動物骨や人骨にしている点も驚きです。しかも動物骨については、公家屋敷跡・武家屋敷跡と対照的に町屋とを比較していることも、幅を広げた成果が示されているものと思われます。食していたのが鳥獣類が多いか、魚介類が多いかの比較、そして人骨からはう歯の発現率からみて当時の歯科衛生観念の相異にも言及しているは興味深い。今後の研究の発展に期待するところ大です。

◇助成研究評議委員

遺跡から出土する動物骨と人骨を複合的に分析して、江戸時代の町民の生活を推測する。とりわけ、ゴミ捨て場から発掘される動物骨を「食品残渣」としてとらえ、当時の食文化や栄養摂取状態を推し量る研究は、とても興味深い成果が得られたようだ。長い時間が経過したために、残渣として残っていない植物性食品をどのように推測するか。今後の研究として興味深い。

◇助成研究評議委員

論文作成や基礎研究が丁寧でかつ明確に記載されており、考察も仮説にとらわれず、真実に迫ろうとする姿勢がとても好印象であった。これまでにない考古学の観点から、栄養学を追及していく新たなアプローチは大変興味深く、今後の研究の幅も広めていく意思が感じられ素晴らしい内容であった。現段階では食材に特化しているが、今後料理についても追求できたら面白いのではないだろうか。