慶応義塾大学 医学部
老年内科
新井 康通
「「超高齢者における骨格筋減弱症の発症と食習慣の関連についての包括的検討」」

◇助成研究評議委員

高齢者社会といわれて久しいが、高齢者の栄養素摂取状態を定量的に測定する方法は確立していない。この問題が、高齢者における人間栄養学研究の進展を大きく阻んできた。この研究はこの根本的な問題に挑戦するものであり、極めて重要な課題であると高く評価する。
一方、この種の研究の方法論は見た目ほど容易ではない。ていねいな研究を行い、着実な成果を上げることを期待したい。

◇助成研究評議委員

高齢者においては、骨格筋減弱症を予防し、自立を維持することは極めて大事なことである。本研究者は、世界一の長寿国であるわが国において、超高齢者の疫学、特に栄養に関する基礎データが殆どないと指摘している。

そこで、85歳以上の一般住民500名を対象に食事摂取頻度質問票を用いて栄養調査を行い、骨格筋萎縮症と食習慣、栄養摂取量の関連を明らかにしようと計画している。このことは、加齢、低栄養、蛋白同化ホルモン低下など複数の要因によって起こるとされている老年症候群とも云える骨格筋減弱症の発症機序を探り、この予防・進行阻止になんらかの手懸りを得られるものと大いに期待出来る。ぜひ進めて欲しい研究課題である。

◇助成研究評議委員

超高齢者を対象にした栄養疫学研究であり、高齢者の骨格筋減少はADL(日常生活動作)を低下させ、高齢者の自立や健康維持に大きな影響を与えることから、特に超高齢社会を迎えた日本においては、重要で有意義なテーマと考える。

超高齢者の食生活実態調査は、非常に困難と思われるが、既に150名の超高齢者を対象にパイロット試験を行っており、今後2年間で対象者を500名まで増やして、身体状況と食物摂取状況との関係を明らかにしようという、実施計画がしっかりと立てられている。老年医学を専門とする申請者だからこそ可能な、超高齢者の人間栄養学研究の成果に期待したい。

◇助成研究評議委員

超高齢者(85歳以上)・500人を対象に栄養調査を行い、骨格筋萎縮症と食習慣の関連を調べる研究で、日本ならではの試みといえよう。この種の研究は、意外にもヨーロッパではすでに実績があるにもかかわらず、世界一の高齢者社会であるわが国におけるエビデンスがほとんどない状況である。

申請された研究経費の規模や使途が、研究の目的と実施計画によく合致しており、研究の実行意欲と実現性がきわめて高い点も採択理由としてあげられる。