静岡県立大学大学院
生活健康科学研究科
成川 真隆
「「身体の生理状態が食行動に与える影響 ~運動性疲労と味覚感受性の関係~ 」」

◇助成研究評議委員

味覚と疲労という生理学上の2つの課題を結びつけたユニークな研究であると高く評価する。その反面、両者ともに測定方法の確立が十分でなく、そのために、この研究も実際にはかなりの困難が予想される。それを乗り越えて、着実な成果を上げることを期待したい。

◇助成研究評議委員

運動による強い疲労により、味覚が変化する可能性が示唆されているが、申請者はそのような状態では、どのような味質、そして濃度が好まれるのか? また、同一物質から感じる味強度が疲労により、どの程度変化するのかに興味を示している。
これらについての解明がなされると、どの程度の濃度のどのような味質を与えることで、いかに疲労の回復に役立てられるかの手懸りが得られるものと期待される。

◇助成研究評議委員

運動性疲労と味覚感受性の関係を明らかにして、疲労時の有効な栄養補給や嗜好を満足させる食事の提供に結びつけようという、ユニークな研究である。「疲労」と「味覚」は非常に一般的で日常的な生理現象であり、その関係を明らかにすることは興味深く、有意義なテーマになり得ると考える。

しかし、「疲労」と「味覚」という現象には、いずれもそれを定量化する明確な指標がない現状では、両者の関係を科学的に証明するのは難しい。また、被験者に高強度の運動負荷を課すことに関しては、倫理的配慮はもちろん、事前にきちんと「疫学倫理審査委員会」等の承認を受けて実施していただきたい。

高強度の運動負荷の下で、諸々の生理学実験が可能か、それを定量化できるのか、課題は多いが、挑戦する価値は十分あり、その成果に期待したい。

◇助成研究評議委員

疲れた時は甘いものが欲しくなったり、酸味がおいしく感じられたりするという「疲労による味覚の変化」は容易に実感できる。この研究は、疲労と味覚の関係を定量的に明らかにしようとするものである。ストレスが味覚に与える影響についての調査・研究は少なくないのだが、それは主として精神的ストレスに関するものである。

肉体的ストレスと味覚の研究は少ない。それもそのはず、実験のためとはいえ、被験者を肉体的に疲労させることにはかなりの困難が伴うからだ。その困難に果敢に取り組む研究意欲を高く評価する。