国立成育医療センター
母性内科
入江 聖子
「「肥満妊婦における至適栄養管理に関する検討」」

◇助成研究評議委員

妊婦の栄養管理、特にエネルギー摂取量の管理は、妊婦のやせ志向や体重増加を抑える指導の流布、その結果としての低出生体重児の増加など、さまざまな問題を抱えているが、科学的な知見がきわめて乏しい分野である。この問題への答えを得ようとする果敢な研究であり、その必要性は高く評価される。しかし、そのためには非常に高度な研究デザインとその実施が要求される。
今回の研究では無為な高望みはせず、実施可能な範囲をわきまえ、その範囲前で研究を遂行し、着実な研究成果を上げることを期待したい。

◇助成研究評議委員

妊産婦の栄養管理に関しては、平成18年2月に「妊産婦のための食生活指針」が出されているが、エネルギー摂取量の管理等に関して、科学的根拠に基づく定量的な指針とはなっていない。しかし、若い女性の「肥満」や「やせ」の増加とともに、臨床の場においては、母体に応じた適切な栄養管理が要求され、妊産婦を対象にした人間栄養学研究データの構築が課題である。
申請者は、国立成育医療センターという最適な臨床研究の場に身を置いていることから、研究成果に期待したい。

◇助成研究評議委員

妊婦の体重に関しては、2つの問題点が指摘されている。1つはやせている妊婦で、生まれてくる子供は、将来、生活習慣病のリスクが高くなることが指摘されている。一方で、肥満妊婦は、巨大児や異常分娩などの母児合併症リスクが高いことが知られている。
ただし、妊婦の栄養制限に関しては、胎児への悪影響を考慮して、その実施は慎重にならざるを得ない。母児合併症を予防し、なおかつ胎児が充分に成長するための、妊婦の至適栄養基準を見いだすための入江氏の研究は、少子化問題が重要視されているわが国にとって、貢献度が高いと考えられる。