国立成育医療センター 母性内科 入江 聖子
「肥満妊婦における至適栄養管理に関する検討」 【評議委員のコメント】 妊婦の体重管理上の問題点としては「やせ」と「肥満」の両者がある。前者では児の出生児低体重と、その児の将来の生活習慣病リスクが高いことがあり、後者では、妊婦の産後糖尿病や巨大児等が指摘されている。この研究で入江氏は後者に着目し、BMI25以上の妊婦にに対する適切な栄養管理が、母子の障害における健康維持・増進に役立つことを目的としている。現時点では、研究対象としている国立成育医療センターの肥満妊婦比率(約4%)が、一般病院(5〜10%)に比べて低いために、研究対象妊婦数が不足している状態である。 入江氏の研究は、少子化問題を抱えるわが国にとって、重要な基礎データをもたらす貴重な研究となる。肥満妊婦の臨床的エビデンス創出のために、さらに研究を続けていただきたい。 【評議委員のコメント】 低出生体重児は将来の生活習慣病のリスクが高いことから、肥満にない妊婦は7〜12 kg の体重増加が望ましいと厚生労働省は提示しておる。しかし、現在の女性のやせ指向の結果から、児の出生体重低下が問題になっている。本研究者は日本人肥満妊婦に対する適切な管理を検討するといい、研究助成の申請を行った。2009年4月から初診を受けた BMI 25以上対象として、初診時から産後一ヶ月を検討期間として、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群の発症、巨大児の出生、竜早産、などの分娩異常の観察を計画した。 今回は中間報告書の形で報告がなされている。2009年1月から8月までで、単胎妊婦359例を対象としているという。肥満妊婦は 3.9 % 14例、ふつう体重妊婦は 71.9 % 258例、やせ妊婦は 24.2 % 87例であるという。いまだ出ていない研究成績の今後の検討成果に期待したい。 |