福岡女子大学大学院 人間環境学研究科
栄養健康科学専攻 修士課程 金本 郁美
「医療機関における中高年者に対する臨床栄養ケア・マネジメントの有効性の検証」 【評議委員のコメント】 現在は高齢社会になり、そして栄養過多や肥満の多い中高年層も増加している傾向にある。このような時代に、管理栄養士を中心とする栄養スタッフの仕事への意識や、職場での満足度がどうかということは、極めて重要な問題である。栄養面で、国民の健康管理に貢献するような意識を高めるにはどうすべきかを真剣に検討しなければならない時期にある。 本研究は、栄養チームのスタッフについて、活動状況を調査し、医療機関における中高年者に対する臨床栄養ケア・マネジメントの有用性を検証しようという意欲的なものである。 このような成績を得た上で、栄養サポートチームの中心的役割を果たす管理栄養士のあり方を、見つめ直すのに極めて重要な研究である。研究成果報告書では、国保水俣市立総合医療センターの2008年4月から7月までの4ヶ月間に入院し、退院した304名の患者について検討している。 入院時リスクは良好257名について、栄養ケアを実施した結果、リスクレベルの変化は悪化が1悪化3%、2悪化3%、3悪化1%であり、改善は1改善が19%、2改善が14%、3改善が29%だったという。 さらに3改善の84名についての詳細な検討では、男性49%、女性51%、80歳代が最も多く28%を占めていたという。食事内容では一般食が43%と最も多かった。2007度に比し、このような検討を行った2008年度は再入院率が大幅に減少したことを確認していることは、特筆すべきことである。意識をもって、入院患者の栄養改善を目指すことの重要性を浮き彫りにした研究である。助成対象として選択したことの喜びを覚える。 【評議委員のコメント】 本研究に必要なデータ収集は無事終了したが、それらデータに対する統計学的な評価が全くなされておらず、研究としての体をなしていないとの評もあった。とはいえ、病院における管理栄養士への評価の低さに着目し、管理栄養士が今後どのように医療現場で貢献すべきか提言しようとした点は評価できる。 また、本助成に採択されたことで、臨床現場での貴重な経験が可能になり、今後に繋がった由、幸いである。金本郁美氏の今後の活躍に期待したい。 |