考察
佐藤達夫(食生活ジャーナリストの会代表幹事/やずや食と健康研究所助成評議員)
社会の矛盾がそのまま【表面化】
正しくいうとストレスというのは「生体の反応」である。外部からの刺激は「ストレッサー」といい、それに対する生体の反応を「ストレス」という。つまり、ストレスが大きい=外部からの刺激が強い、ということではなく(それも、もちろん大きく関係するが)、生体の反応が強いということを表している。
今回の調査で「男女・各層」のうち、30代女性のストレスがいちばん大きかったということは、とりもなおさず、30代女性の反応がもっとも強かったということを表している。私は、ストレッサー自体は「男女・各層」で、それほど大きな差はないだろうと推測している。ストレッサーは誰にでもかかっているからだ。
ただ、30代女性は、それを右から左へと受け流せないのだ。そのためにストレスが大きくなる。
このことは、現代の「30代女性」が、社会の矛盾を一身に背負っていることを示している。30代女性が、甘やかされて育ったからだとか、不平不満分子だからだとか、自分のことしか考えない人間だったりするからではない。
社会的には「男女平等」「男女共同参画社会」などとおだてられてはいるが、会社で同じ仕事をしていても給料は男性より低く、出世は遅い。そのくせ責任は押しつけられる。一方、家庭内ではは、家事負担はほぼ100%近く女性に押しつけられているのが現実だ。子育ての責任も負わされるし、親の面倒をみなければならないケースさえある。自分で自由に使えるお金も時間も少ない。その割には、やりたいことは山積している。
30代女性は「すべてのことが思うに任せない」状況になっているのだ。“そんなことは30代女性に限らない、男だって同じだ”と指摘する人もあるだろう。しかし、必ずしもそうではないことは「男性のストレスの原因」を見てみれば明らかだ。
男性の場合は、すべての年代で(定年退職後でさえ!)、ストレスの原因は仕事がトップで、しかもダントツである。つまり、男性の場合は「仕事さえしていればOK」で、それ以外のたいていのことは免除される、のが今の日本なのである。
「からだと心の健康」を研究する目的で行ったこのアンケート調査が、図らずも、30代女性が抱える社会の矛盾を見事にあぶり出したことになる。